鎌田正純
1.はじめに
山野美容芸術短期大学のオープンキャンパスに訪れる高校生に短期大学でのカリキュラムの説明をしていると、「美容は芸術の一分野なのに、どうして化学なんて学ぶ必要があるのですか?」という声が聞かれます。皆様は美容に化学が必要な理由をお答えできるでしょうか。化学者の視点で見れば、美容の根幹となるパーマネントウェーブや髪を染める行為は、化学者がフラスコやビーカーで化学反応をしている行為と全く同じです。美容師は、頭髪のデザインやメイクができれば良いわけではありません。美容師として世の中で活躍するためには、化学のように美容と関連する様々な学問を理解することが必要です。
本稿では、短期大学であり、美容師養成施設でもある山野美容芸術短期大学において、「化学」や「香粧品化学」の講義を教授している1人の化学者の視点から、美容の世界を目指す若者が美容師になるまでの教育について、美容と化学の関係について紹介しつつ、お話させていただきます。
2.美容師とは?
まず、はじめに日本の法律における美容と美容師の定義についてお話します。美容師法の第2条には、「美容」とは、パーマネントウェーブ・結髪・化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいい、美容師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けて、美容を業とする者を「美容師」と定義しています。美容の定義には、「髪を切る」という行為は含まれていません。美容師は、パーマネントウェーブ、染毛や結髪などの美容を行う際に必要に応じて、髪を切る行為や産毛を剃る行為ができます。一方、髪を切り、ヒゲを剃る行為を業とする者は理容師といいます。美容師と理容師というと、同じ職業のような印象をお持ちの方が多いと思いますが、法律上は明確に区別されています。
美容師国家試験を受験するためには、厚生労働省の認定する美容師養成施設で2年間以上の教育課程を修める必要があります。美容室で長年修行しても、その資格を得ることはできません。美容師養成施設への入学は、美容師への第一歩となります。毎年、多くの若者が美容師養成施設に入学し、多くの美容師が誕生しています。美容師養成施設の多くは高等学校を卒業した者が入学できる高等専門学校です。全国に約200校あります。高等専門学校のほかに山野美容芸術短期大学のように極一部の短期大学でも、厚生労働省から美容師養成施設の認可を受けており、これらの短期大学では、「美容師国家試験受験資格」と同時に「準学士」の資格を取得することができます。
写真1 着装・茶道・華道の授業風景